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5 ◇夫の暮らすコンドミニアム

Author: 設樂理沙
last update publish date: 2026-04-05 12:45:16

 夫の暮らすコンドミニアムと呼ばれている部屋の内装や家具は

かなりグレードの高いものに見える。

 洗練されている中にも東南アジアを感じさせる応接間といったところだろうか。

 全体的には茶系でまとめられている。

 ウッディなローテーブルは真ん中がガラス張りになっていて、3脚ある椅子は

背中部分から扇形に手を置けるところまで繋げられており、重厚な作りになって

いる。

 しかも、片側には少し離して別色で革張りオフホワイトの3人掛けほどの

椅子があるのだ。

 すぐ後ろの壁の色が……明るめの緑とは、ちょっと引いた。

 どこかのタワーが描かれている絵まで掛けられている。

 驚いた。

 こんなりっぱな応接間セット、どんな客があるというのだろう。

 寝に帰るだけの住宅ではないのか? なんていう思いが湧いた。

 ともあれ、応接間はそれなりに調和のとれた美しい部屋だった。

 会社の借り上げ物件なので、たまたま良い部屋が当たったのかもしれない。

 そしてひとたびプライベートルームに目を向けると……

 夫の部屋の至る所に、その証拠と思われる残骸が残されていた。

 風呂場の蓋を取って排水溝を覗いたら、長い髪の毛が何本も。

 昨夜かその前か直近で風呂だかシャワーだか使ってシャンプーしたであろう

女の髪の毛がわんさか。

 その残骸が残っていた。

 だらしない女性なのだろう。

 自分の洗い終えた後の、シャンプーして頭部から抜けた残骸の処理もしないで

いられるのだから。

 自分の家じゃないんだよ?

 恋人きどりだか愛人きどりだか知らないけどさぁ、他所様《よそさま》の家だろうに。

 髪の毛を見つけた後、洗面台の下を開けて、見た。

 夫が無造作に隠したであろう、女の歯ブラシとコップとブラシがあった。

 そして生理用品とスキンまであったさ。

 どういうこと?

 まったくぅ、頭きた。

 夫が会社に行っててよかったよ。

 いたら、ぜったい過呼吸起こしながら絶叫してたわ。

 私はそれらを画像に撮った。

 いろいろと証拠にできそうなものは画像に撮った。

 今は頭が沸騰して、上手く働かない。

 なので、こちらにいる間にできることをと動いた。

 来なくていいと言う夫の言葉に感じた違和感。

 不安に思っていたことは、現実のものとなって私の前に現れた。

 ある、とある芸人が綺麗な女優と結婚していたことがあった。

 東京と大阪……別々に暮らしていてそんな中、妻の女優が今度そっちに

しばらく行こうかな、と連絡したら──

来なくていいと、そのとある芸人は答えたという。

 フタを開けてみたら、はいぃ~ とある芸人、別腹の女いましたぁ~って

いうのを週刊誌で読んだことがあった。

 私……今、その女優さんと同じじゃない。はははははっ。

 いやっ、比べたら申し訳ないよね、私全然美人じゃないし。

 私の滞在中、夫は仕事で日中いなかったため、なんとか動揺を隠せたと思う。

 わたしが帰る日、夫がほっとしているのが分かって更に落ち込んだけどね。

 いわずもがなだけど、勿論3日間いて夫は私を求めてはこなかった。

 ホントによく分かる……分かり易い人だね、あなた。

          ◇ ◇ ◇ ◇

 結局3日間過ごして、私は帰国した。

 帰りの飛行機の中、夫にもう少しで会えるのだと嬉しさで目を輝かせ

外の景色に見入っていた数日前の私はどこにもいなかった。

 静かに目を伏せ、シートに座っている私がいただけだ。

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